北極のペンギンたちについて

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なぜ「流星」ではなく「彗星」なのか?

初めて『彗星の空』という曲名を聞いた時、流星ではなくて彗星なのが何となく珍しいような気がしていた。

実際JASRAC作品データベース検索サービスを利用して「流星」がタイトルに含まれる曲を調べると1802件ヒットするが、「彗星」がタイトルに含まれる曲は302件に留まる。(いずれも2023.4.3調べ)圧倒的に「流星」の曲の方が多いことが分かる。

星空を流れるものの中で、わざわざ作曲者が流星ではなく「彗星」を選択したのには強い意図があったと考えるのが自然だ。

 

では、(『この星のHIKARI』や『NEW WORLD』での光や暗闇への言及を考えれば「光」とか「星」とがキーワードになるのは比較的自然であるとして)「彗星」でなければならない必然性はどこにあったのか。

 

前提として歌詞中の比喩を中心にざっくりとメッセージを確認しておこう。

暗い夜を過ごしていた(暁を“待っていた”ということは夜)中で空に輝いた彗星を手がかりに、その軌跡を追いかける中でぼくら(= SixTONESは出会った

一度は未来図は散ったけど(バカレア組が解散になったことなどを想起させる)またあの彗星の軌跡に合流した

ぼくらはこれからもあの星を信じて追いかけて、この先の奇跡を目指してまだ見ぬ景色を見るために歩んでいく

このように見ていくと、(奇跡と軌跡の音が同じだからということだけでなく)単に彗星の光そのものというよりは、夜空に輝く「彗星の行く先」という部分の方こそキーワードであるように読むことができる。

 

ではその彗星はどこへ向かうのだろうか。

彗星のコマや尾が目立って観測され始めるのは、彗星が太陽からおよそ1天文単位前後 、つまり地球の軌道程度まで近づいてからです。彗星が太陽に近づくほど本体から放出されるガスや塵の量が多くなるため、コマは明るくなり、尾も明るく長く伸びます。

彗星 | 国立天文台(NAOJ)より引用

彗星そのものの軌道は様々なようだが、地球から観測できる軌跡という部分に絞って考えると太陽に向かっていくものが明るく輝いているらしい。「あの星の行く先」は太陽ということになる。

一方の流星は、

宇宙空間にある直径1ミリメートルから数センチメートル程度のチリの粒が地球の大気に飛び込んできて大気と激しく衝突し、高温になってチリが気化する一方で、大気や気化したチリの成分が光を放つ現象です。

流星群 | 国立天文台(NAOJ)より引用

とのこと。夜空に輝いた後は燃え尽きて地球上に落ちてしまう。

これらを踏まえて考えると、「光」や「星」そのものではなく「軌跡」をキーワードにそれを追いかけていくという歌詞である以上、その行く先が流星のように地球の大気圏では困るのだ。

明るく輝く太陽へ向かう彗星を追いかけると歌ってこそ意味があるということになる。

そもそも「なぜ流星ではなく彗星なのか」という問い自体ナンセンスだったのかもしれない。

『彗星の空』とは、明るく地球を照らす圧倒的な太陽へと向かうSixTONESの、通過地点としての現在を描いた曲なのではないかというのが私の現時点での解釈である。

かけがえのない仲間を得て、暗闇の中で見た明るい彗星の軌跡を頼りに進む彼ら。太陽に近づけば近づくほど明るく輝くようになるという性質にまでその姿を重ねているとしたら、これから先SixTONESの輝きがさらに増していくようにという願いも込められていると読むこともできるかもしれない。

一方で、太陽に到達したら消えてしまう彗星そのものに重ねるのではなく、ぼくら(=SixTONES)をあくまでもそれを“追いかける存在”として終始徹底して描いてくださったのも嬉しい。

 

彗星の空 願いよただ

ぼくらを導いてくれるかい?

間違いなど無い 信じるその先

叶う奇跡 この目で見届けたい

『彗星の空』NAOKI 2023より

 

「これがラストチャンスで後がない」という若干ネガティブなニュアンスを孕んではじまった“最後”が、いつしか「この6人・このチームでこの先もずっといたい」という最高にポジティブな“最後”の夢になっている。

あの星の行く先を目指す彼らの奇跡のような旅に、今偶然か必然か参加することができている幸せを噛み締めながら、teamの一員としてこれからも同行できたらと思う。